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携帯電話で腫瘍ができる

携帯電話で腫瘍ができる 

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「月刊・現代10月号」 矢部 武

子どもの携帯電話の使用については、塾は否定的な態度を一貫して通してきました。
(1) 公的な場所と私的な場所の見境がなくなる危険性がある。
(2) 頻繁なメール使用は、言語能力・コミュニケーション能力を低下させる要因になる。
(3) 携帯電話から発生する電磁波が脳に悪影響を及ぼす。
というのが主な理由です。
結論として、中学生以下の子供は携帯を持たない方がよいと考えています。
(1)、(2)については書籍や雑誌で日常的に啓発がなされていますが、(3)については今まで、取り上げられることはありませんでした。今回ご紹介する論文は「月刊・現代」に9ページにわたって掲載された「携帯電話で腫瘍ができる 矢部 武」をまとめたものです。以下(注: )内は私なりの考えを書いたものです。

<本文>
携帯電話(以下携帯と略す)の電磁波による腫瘍リスクはこれまでも一部では指摘されていたが、発症までの潜伏期間が長いためか、問題視されることはなかった。

しかし、世界中で携帯の十年以上の長期使用者が増えた今、状況は変わった。欧州などで最近、「長期使用すると腫瘍リスクが高まる」との調査結果が発表され、米国では「携帯によって脳腫瘍になった」とする訴訟が相次いでいる。

筆者が取材した携帯と腫瘍の関係をしらべているイスラエルの疫学者は「携帯が無害だと言い切れる時期は過ぎた。害を及ぼす可能性があるのです」と話した。

また、米国では最近、携帯から発生する電磁波の健康リスクに関する報道が増えたが、その背景には相次ぐ訴訟などによる人々の関心の高まりがある。

ルイジアナ州とペンシルベニア州における訴訟の代理人をつとめるマイケル・オルウェイス弁護士は、筆者の取材にこう言い切った。

「携帯を頭に近づけるのは、頭を放射線にさらしているのと同じで、重大な公衆衛生の問題です。携帯の電磁波は脳腫瘍などの悪影響を及ぼすとの調査結果が出ています。業者は危険性を認識していながら消費者に伝えず、安全対策を怠ってきたのは明らかです。」

米国で携帯使用と脳腫瘍の関連を認めた判決が出たのは05年5月。その原告、シャレーサ・プライスさんに筆者は話を聞いているが、その闘いはすさまじいものだった。

プライスさんは96年8月、市内の携帯電話販売店「ACS」で働き始めた。彼女の仕事は携帯購入者への設定サービスで、毎日3,4時間携帯を使った。職場には電波発信試験装置が設置され、大量の電磁波が放出されていた。身体に異常を感じたのは勤務してまもなくだったと話す。

99年2月、仕事中に発作を起こして病院に運ばれ、脳腫瘍と診断された。それは頭蓋骨のなかの脳を包む膜にできた脳膜腫だった。彼女は2度の手術で腫瘍を摘出したが、その後も治療のために会社を休まねばならず、99年12月に解雇された。

99年9月に労災専門の保険会社を相手取って労災補償を求める訴訟を起こした。その後、カルフォルニア州の消費者権利擁護団体「ワイヤレス消費者同盟(WCA)の代表を務めるカール・ヒリヤード弁護士に出会い、弁護を無償で引き受けてもらった。

ヒリヤード氏はすぐれた弁護士であった。彼は、医療裁判経験が豊富で電磁波の有害性に詳しい南カリフォルニア大学病院のナフマン・ブラウトバー博士に証言を依頼した。

ブラウトバー博士はプライスさんの診断記録や職場の状況など詳しく調べた上で、「電磁波が脳腫瘍の原因と考えるのが合理的である」との報告書を作成し、これが決め手となり05年5月、判事は原告の訴えを認める判決を下した。保険会社に3万ドルの労災補償支払いを命じた。

こうして裁判には勝ったが、彼女は今でも脳腫瘍再発の不安におびえ、発作止めの薬を飲み続け、目の障害にも苦しめられている。

A.最近の研究データ

(1)07年12月 イスラエル テルアビブ大学疫学部のシーガル・サデッキー博士率いる研究チームが、耳下腺腫瘍と診断された患者460人(症例群)と非患者1300人(対照群)を調査したところ、携帯を頻繁かつ長時間使用する人の腫瘍相対リスクは約1.5倍高かったという。

耳下腺は唾液の分泌をつかさどる唾液腺で携帯の電磁波を多く浴びる部分である。

この結果は同年12月の『米国疫学ジャーナル』に発表されたが、結論としてこう述べられている。

「これだけで結論を導くことはできないが、少なくとも携帯使用と耳下腺腫瘍に関連があることを示している。その確証を得るためにも、長期使用者を多く含めた調査が必要だ。それがはっきりするまで、携帯使用者は防護策を取るべきである」

イスラエルでは、世界でも比較的早く携帯が使われ始めて、ヘビーユーザ―が多いことでも有名であるが、この調査発表以降、イヤホンマイクなどの防護器具を使う人がずっと増えたという。

(2)スウェーデンのカロリンスカ研究所が聴神経患者148人と非患者604人を対象にした調査では、10年未満の携帯使用者には腫瘍リスクの高まりは見られなかった。

しかし、10年以上の使用者で携帯を押し当てる側に腫瘍を発生するリスクは3.9倍に高まるとのデータを得た。これは04年に発表された。

(3)英国、フィンランド、ノルウェー、デンマーク、スウェーデン五ヶ国の調査をまとめたものが05年に発表されたが、長期使用者で携帯を押し当てる側に聴神経腫を発病する相対リスクは1.8倍となっている。

これら一連の調査は、国際ガン研究機関(IARC)がWHOの電磁波プロジェクトの一環として実施しているもので、インターフォン研究と呼ばれる。これにはイスラエル、スウェーデン、英国、ドイツ、イタリア、日本など13カ国が参加している。

(注:この情報は当然、日本の関係者は知っていることに注目!!)

日本では総務省の生体電磁環境研究推進委員会が00年12月から04年11月にかけ、携帯使用と聴神経腫などの関連性について調査し、「関連性はなかった」と発表した。しかし、この調査には見逃してならない点がある。それは10年以上の使用者がほとんど入っていなかったことだ。

総務省も上記研究の不十分さは認識しており、「成人の携帯使用者10万人以上を対象にした新たな調査を08年中に始める」と公表している。

今のところは「ヘビーユーザー」以外に腫瘍のリスクがあるとする研究は少ないが、子供についてはまた違う見解を持たなければいけない。

B.子どもの方がずっと危ない

大人の携帯使用者以上に危険にさらされているのが、子どもたちである。頭蓋骨が薄く、神経組織も未発達のため、電磁波の健康被害をもろに受けやすい。

ユタ大学のオム・ガンジー博士は、「人体に吸収される携帯電磁波のエネルギー量が大人と子供でどう違うか」を調査した。

脳内目のレンズ
成人7.841.34
10歳児19.776.93
5歳児33.8415.60

単位いずれも(mW/kg)

つまり、5歳児の脳は携帯電磁波の熱を大人の4倍以上も多く吸収し、5歳児の目は11倍以上も吸収してしまうことになる。

しかも、身体の保護組織が出来上がっていない子どもは大人よりはるかに有害物質の攻撃に弱い。

(注:最近の研究から「2歳まではテレビを見せるな」と言う啓発活動が、多くの教育研究機関でなされているが、このデータをみても子どもに対する電磁波の影響はすさまじいものがある。)

これらの状況を受け、英国政府は05年1月、「16歳以下の子供の緊急時以外の携帯使用を控え、10歳以下の子どもの使用を禁止するように」と勧告し、携帯会社にも子ども向け販売キャンペーンをやめるように求めた。

これは、英国放射線防護局(NRPB)が00年に政府に出した勧告をもとに、英国保健防護庁(HPA)が決定したもの。

米国人疫学者ジョージ・カーロス博士によると、現在では、英国、フランス、ロシア、イスラエルが子供の携帯使用を制限・禁止する勧告を出している。

しかし、日本政府はこのような勧告をしていない。

携帯電磁波などの研究調査を行っているNPO「市民科学研究会」の上田昌文代表は
「インターフォン研究の概念が子どもたちにあてはまるとしたら、彼らが大人になる頃に影響が出てくる可能性がある。親は携帯電話をもたせれば脳が破壊されるかもしれないとの意識をもたなければならない。子ども向けのガイドラインができるまで、中学生以下には携帯を持たせるべきでないと思います。」

と話す。(注:この見解は塾が一番危惧していることであり、この考えを全面的に支持します。)

日本では大人の携帯使用者への助言も警告もほとんど行われていない。前出のジョージ・カーロ博士は日本の携帯使用者にこう警告する。

「政府が消費者を守ってくれると考えるのは甘すぎる。政府は携帯業界が提供したデータをもとに規制をつくっているが、その情報の多くは古く時代遅れのものです。

政府が電磁波の確証を得た頃には、すでに脳腫瘍が蔓延しているかも知れない。だからこそ早く防護策をとらなければならないのです。」

日本では水俣病が発生した時、いくつかの科学的なデータ、裏づけがあったにもかかわらず、経済成長を優先して、政府は対策のためになかなか腰を上げようとしなかった。

だからこそ日本人も携帯の利便性だけでなくリスクもすべて知った上で、身を守るための選択をしていくことが大切ではないか。<以上本文>

(注:日本の政府があてにならない例は水俣病に限ったことでない。血液製剤を服用して、エイズにかかった血友病患者。止血剤の投与でC型肝炎になった患者。厚生労働省がしっかりしていれば防げたのではないか?
最近では、中国冷凍食品の殺虫剤混入。乳製品へのメラミン混入。事故米の偽装事件。いずれも市場に出回って、初めてその実態が分かった。農水省がしっかりしていれば防げたのではないか?
政府はこういった国民の安全に関連する見張り役としての機能を果たすべきであるにもかかわらず、その対策は常に後手、後手になっているのが実情である。
被害者にならないためには、政府が消費者を守ってくれるという幻想を抱かず、自ら自衛策をとるのが賢明だろうと思う。)

2008年9月

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